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原稿終わりました

いやったー原稿おわったよおおおおおお
某様方にデータ送ったのであとはコメント欄だけです
それが終われば、更新しようかな~

一本没にしたやつをそっと続きを読むにおいておきます

風が、吹いていた。
それは俺の心にあった迷いまでも吹き飛ばし、凍っていた心にじわりと忘れかけていた温もりを再び思い出させるには十分すぎる優しさがあった。
けれど、俺はそれに気付くのが遅すぎた。もっと早くそれに気付いていれば、この結末を変える事だって、できた筈なのに。
 
 
宗茂が戦で重傷を負った。その事を伝令が知らせて来て、慌てて、宗茂の元へ向かう。
いつもではなかったが、共に戦場を駆けていた友を、心配しない奴はいないだろう。俺だってそうだ。
だが、正直、想像もできなかった。あの宗茂が戦で重傷を負うという事が、どうしても。
嘘であってくれ、冗談ならば笑って済ませてやるから…!
 
 
慌ただしい足音をたてながら、勢いよく襖を開けるとそこにあったのは布団に横たわりまるで死んだように、浅すぎる呼吸をしている宗茂と、傷の処置をしていたであろう医者、そして宗茂の家臣達が、静かに座っていた。視界に入ったその状況だけで、冗談であれと思っていた俺の希望を簡単に打ち砕く。
「宗茂…」
呟くようにこいつの名を呼び、ゆっくりと歩み寄るとこいつの両目がゆっくりと開き、半分虚ろな視線を俺に向けた。
その仕草に周りの者達はどこか驚愕した表情を浮かべている。恐らく宗茂は、今の今まで意識を取り戻していなかったのだろう。宗茂殿、殿!と各々がこいつに声をかけている。だが宗茂はそんな家臣達をよそに、静かに口を開き、それを黙らせる。
「黙ってくれ……頼むから、清正と二人きりにしてくれ」
「……分かりました…」
渋々、と言った感じで、宗茂の周りにいた者たちは皆、部屋から出て行く。そうして、俺と宗茂の二人だけの空間になって、やっと俺はこいつに近寄り、五月蠅くしないようゆっくりと座った。
「お前が深手を負うなんて珍しいな」
無事か、なんてそんな事を聞ける雰囲気ではとても無い程、近くで見る宗茂の顔色は悪く、何を言えばいいか分からない俺は、結局そんな事を問う事しかできない俺を、宗茂は怒るでもなく視線だけをこちらにむけた状態のまま、ああ、と言葉を返してきた。
「命取りだと知っているのに、他の事に意識を取られてな…情けないとは思っている」
「馬鹿か。それでこんな重傷負いやがって」
「ははは、すまない。だがもう、助かる事はないだろうな」
宗茂が言った言葉に俺の思考が停止する。
何を言っている?助からない?それなら何故医師や家臣を追い出して俺と話なんかしている。そんな一刻を争う事を言わず、俺と二人きりになった。それが、どうしても分からずに宗茂に視線だけを見やると、こいつは先程の表情のまま、笑ったままで。
宗茂らしくもなく生きる事を諦めているように見えて、俺は畳に拳を叩きつける。
「ふざけるな!お前が生きないとお前の家はどうなるんだよ!?」
睨みつけ叫ぶように問う俺の言葉に宗茂は何も答えない。答える代わりなのか、弱々しい手がそっと俺の頬を撫で頭を撫でてくる。
しかし、それでは答えにならない。俺はお前の思考なんて、読めるわけもないのだ。
「答えろ、宗茂…!」
震えだす声を隠す事もできずに俺は宗茂の答えを求める。お前の家は、もうお前しか守る事ができないのにそれを諦めて放棄している事が許せない。間違い、愚かな行いをしてしまった俺を諭したお前が、そんな事を言うな。
「本当なら今、会話をする事すら辛い。…だが、最後に、お前にどうしても言わなくてはいけない事が、ある」
この状況で俺に何を言いたいんだ。それなら早く言って早く休め、そう言いたいのに宗茂は俺の頭を撫でたまま、中々続きを言おうとしない。
「…早く言えよ。聞いてやるから」
未だ俺に触れている手にそっと自分の手を添えて言うと、こいつはこの場に合わない、幼子のような表情で、微笑んだ。
「愛していた」
「な、にを…」
「お前を、愛していた」
――――愛していた。
過去形なのは恐らく、こいつなりの優しさなのだろう。だが、その優しさが俺にとってはどこか苦しいのに、心にすっぽりと落ちたその言葉は、嗚呼、自分も宗茂がもしかしてずっと前から好きだったんだな、と自覚するには十分で。
だがそれを知っても遅い。遅すぎたんだ。
今気付いたって宗茂は、いなくなってしまう。会話する事も触れられる事もできず、温もりを感じる事も、できない。
何故もっと早く気付く事ができなかったのか。もっと早くに気付ければ、何か変わったかもしれないのに。
「それ程、嫌だったか」
俺の沈黙を拒絶と感じたのか、宗茂はそっと手を引こうとする。だが俺はこいつの温もりを手放したくなくてその手を強く、握りしめた。
「清正…?」
「離すなよ…馬鹿」
ぐっと、目の奥が熱く感じるのを誤魔化して、その手をまた俺の頬に触れさせる。
「宗茂………俺も、好きだ。だから」
俺の目の前から、いなくならないでくれ。
 
 
「……悔しいな」
苦しそうにぽつりと言った宗茂の言葉に複雑な色が見えて、再び宗茂に視線を向ける。
「もっと早くにお前に言えば、全てが変わっていたというのに」
「そんな事を言うな」
俺は未だにこいつが死ぬと認めたくない。こんなに会話もできているんだ、きっと叶う。そういくら祈るように望んでも、こいつの顔色が少しずつ悪くなっている事、僅かに震え冷たくなってきている手が、その望みを嘲笑う。それは叶わない願いだと。
唇を噛み締め俯きそれ以上何も言えない俺に、宗茂は、そんな顔をするな、と俺に話かける。
「なんでお前はこういう時に限って気を使うんだ…これじゃあ」
余計に悲しくなるじゃないか、なんて言葉を続ける事はできなかった。宗茂を困らせたい訳じゃないから。
 
 
「―――」
小さな声で宗茂は何かを言ったが、あまりにも小さすぎたその声を聞き取る事が出来ずに、俺は顔を宗茂に近づける。すると、こいつは自分の顔を枕から軽く浮かし、俺の口に自分の唇を一瞬だけ触れさせた。
「っ!?」
驚いて後ずさりするように顔を離し睨みつけると、こいつは何が楽しいのか笑みを浮かべたままこちらを見ている。
「宗茂、お前!」
「初心だな、清正」
からかうように、言った宗茂
 
 
 
 
 
 
 
 
 
が、どうしたんだよ…俺…
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