殿とは違う人だと思った。だけど全てが違うわけではなく、根底で願っている事は同じ。なのにも関わらずにいつもぶつかり合ってはお互いに意固地になる。
その光景に俺は只、まるで子供のようだと思いながら笑っていた。
それが遠い昔の事のように思い浮かべながら、改めて目の前にいる男------加藤清正に視線を向けながら自分の得物を掴む力を僅に緩めた。
「左近」
「なんですか、清正さん?」
呼ばれた名に言葉を返すが、言葉を続けるつもりはないのか無言で思わず苦笑いが溢れてしまう。
言いたい事は、本当は分かってる。だが、俺はあえて知らない振りを、分からない振りをして、この男が再び口を開くのを待った。
本来なら、そんな悠長な事などしていられない大事な戦…天下分け目の戦いをしているというのに。
「…三成は、…俺や正則の覚悟を越えられる程の器が、覚悟がお前には感じられたか?」
耳を澄まさないと聞き取れないような小さな声で問う。
「ええ、殿ならその覚悟以上の事をしてのけるだろうと俺は考えてますよ」
「そうか。…それならいいんだ」
静かな動きで得物を構えるのを見て、俺も自分の獲物を構え、じっと睨み合っていたが。
何故かあんたは、笑っていた。
決して誰かを嘲笑するような笑みでも、全てを諦めたような力の抜けた笑みでもなく。
ただ、まるで何かを包むかのような…戦場には不釣り合いの笑みだった。
「清正さん、あんた…」
「話は終わりだ。俺はこれ以上、話す言葉はもう何も残ってなどいない。」
纏っていた雰囲気が、一気にぴりぴりとしたはりつめた雰囲気へと変わる。
来る、そう思った瞬間に、俺へと攻撃を仕掛けた。
荒く激しい呼吸の音が
(・ω・)<…ムリ
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